起動=スカイダイビング
安全は最優先される。
設計者はこれを常に念頭にモノづくりを行うが、それでも完全に安全な設計は難しい。
FA設備を初めて動かす際は、設計の完全性が担保されておらず、最も危険な状況であると言える。
起動ボタンを押す瞬間の緊張はスカイダイビングに似ている。
本当にパラシュートが開くかどうかは、飛び降りてからでなければ分からない。
保護機能が正常に働くか、設計段階で見落としてしまった重大な欠陥が本当に無いのか、起動ボタンを押して設備が動き出してからでなければ分からない恐怖と設計者は戦い続けている。
子供が人を殺す
実際に設備が正常に動き出し、設計された安全機能がすべて正常に働くことが確認できてからも、運用を誤れば人は死ぬ。
包丁やレンガが人を殺せるように、使い方を誤れば自分が創造したモノで人が死んでしまうことがある。
想像力によるストレスというか、たった0.000000001%の可能性が設計者を悩ませ続けてしまう。
この恐怖は納期とコストによってさらに増大され、検討に検討を重ねれない実務としての設計は、モノづくりに携わるすべての人の生みの苦しみだ。
ボタン恐怖症
私の会社にも設備の起動ボタンを押せない人たちが存在している。
起動ボタンはおろか、非常停止ボタンを押せない人も多い。
とにかく、事を起こしたくないのだ。
状況を変化させたくない。
自分以外のものを、コントロールの範疇を超えるものを動かしたくないのだ。
これはトロッコ問題と似ていて、助かる人数が増えるにもかかわらず、レバーを引くことで助かる人を殺してしまう変化の責任を負う恐怖が、彼らにボタンを押させない。
SIer的資質
SIerはボタンを押し続ける仕事だと思う。
どんな状況であっても、前に進めていくために、リスクを制御しながら、ひたすらボタンを押していく仕事。
事前にチェックしてもパラシュートが開かないなら、落下しながらパラシュートを組み立てるのがSIerであり、上空から飛び立つことに怯むのは、仕事に挑む覚悟が足りていないと思う。
ボタンを押さなければ扉は開かない。
生きるために恐怖に挑み続けならければならない。